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引用元:2015/8/18 16:00 dot.

 激戦の“保活”を制して認可保育園に入園しても、ホッとしてはいられない。深刻な待機児童問題を解消するために、保育施設があまりにも性急に増やされた結果、保育の態勢が十分に整っていない園も少なくないのだ。

 認可園であってもずさんな保育園もあると言うのは、保育制度に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんだ。

「4月1日から開園するというのに、3月30日の段階で、スタッフ全員そろっての打ち合わせができていない園、給食で使う食器が決まっておらず、給食設備の試運転もできなかったため、初日に給食が出せなかった新設の認可保育園もありました。保育施設の量の拡充を優先し、保育士の待遇改善など『質』の確保を後回しにした結果、このような現状があるのでは」

 今年4月に施行された「子ども・子育て支援新制度」でも、予定していた財源確保が困難なため、質より量の拡充を優先している。猪熊さんは指摘する。

「新制度のスタートで、これまで保育所を運営するのは社会福祉法人のみという暗黙の制約を設けていた自治体も、保育士の配置人数や施設の面積などの基準を満たしていれば、株式会社だからといって参入を拒むことができなくなり、認可せざるを得なくなりました。待機児童解消のために、まずは保育施設の量を優先している地域では、法人の形態にかかわらず心配な認可保育園の話も耳にしています」

 現在2歳の男児を育てながら、フルタイムで編集者として働く練馬区の女性(36)も、民営化したばかりの認可保育園に見学に行って驚いた。経験の浅い保育士ばかりで、子どもが騒ぐと舌打ちしたり、男の子同士の喧嘩を無言で引き離して終わりという状況が目についた。

「とにかく保育士免許を持っている人を集めただけ、という印象を抱きました。うちの息子は食物アレルギーがひどいので、こんな保育園に預かってもらうのは不安でした」

 結局、古くからある公立認可保育園のみに入園を申請したが、入れずに現在は認可外保育園に通わせている。

 もちろん株式会社の参入が、必ずしも悪いわけではない。子どもの居場所確保に悩む保護者にとって保育施設の増加は朗報だ。

 今年、激戦の保活を経て企業が運営する認可園に0歳の息子を預ける品川区のメーカー勤務の女性(38)はこう言う。

「うちの区も激戦区で、公立か私立か、認可か認証かなどと、言っていられない状況でした。この認可園を増やす方向性は継続してほしいと思います」

※AERA 2015年8月24日号より抜粋