
引用元:毎日新聞 2015年05月08日 20時05分(最終更新 05月09日 10時41分)
文部科学省は8日、義務教育の未修了者らが通う「夜間中学」に関する初の実態調査の結果を公表した。公立の夜間中学は8都府県の25市区で31校あり、生徒数は1849人だった。一方、ボランティアらが運営する「自主夜間中学」(識字講座なども含む)は154市区町村に307カ所あり、生徒は7422人と約4倍だった。文科省は「夜間中学の潜在的ニーズは高い」とみており、公立夜間中学の各県1校設置を目指し、今年度予算で設置へ向けた調査費などに1000万円を計上している。
昨年5月1日時点の状況を調べた。公立夜間中学があるのは千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、奈良、広島の8都府県。1849人の生徒のうち約8割が外国籍で、最も多かった入学理由は「読み書きの習得」と「日本語会話の習得」でそれぞれ27%。
年齢は60歳以上が29%を占め、10代から50代の各年代は13〜15%ずつとほぼ同割合だった。年間授業日数は175〜210日だった。
一方「自主夜間中学」でも参加者7422人のうち外国人が6割を占めるが、不登校で義務教育を十分受けられないまま中学を卒業した日本人(形式卒業者)が278人いた。公立夜間中学はいずれも「中学未卒業」が入学要件のため、自主夜間中学が形式卒業者の受け皿になっている実態が浮かんだ。ただ、授業の頻度は「週1回」が約6割で最も多く、「平日毎日」は2%にとどまり、公立との差が目立った。
公立夜間中学の設置について全市区町村の74%が「検討の予定がない」と答え、その9割が「要望・ニーズがない」という理由だった。文科省は今後、公立夜間中学の未設置県や、設置の要望が住民らから出されている自治体に設置へ向けた検討を促す。設置済みの自治体に対しても形式卒業者の受け入れなど運用の弾力化を求める方針。【三木陽介】
【ことば】夜間中学
公立中学校の「夜間部」の位置付けで、戦後の混乱期、生活困窮のため昼間は家の手伝いなどで学べない生徒が通えるように設置された。通常の中学校と同様、市区町村が設置し、教員も配置され、教科書も無償配布される。1955年には全国で84校、生徒数はピークの5208人に上った。公立夜間中学は母国で義務教育を修了せず学齢を超過した人が対象のため、対象外の人たちが自主夜間中に通っている。