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引用元:2016年5月17日 日刊ゲンダイ

 603校、209万5000人――。最新の学校基本調査(2014年)によると、日本の私立大学の数と学生数はかくも多い。その学内でいま新たな問題が起きつつある。授業態度が悪く、注意したり低い成績を付けられると凶暴なクレーマーと化すモンスター・スチューデントの出現だ。

 大学アナリストの斎藤健一郎氏が言う。

「授業中のおしゃべりやスマホのゲームなどは日常茶飯事。無断欠席も平気。注意されると異常に反応し、教員や学校に対し攻撃的になる。執拗なクレーマーになってしまう学生もいます。彼らは“モンスター・スチューデント”と呼ばれ、特に定員割れの大学によくみられます。人数を埋めるために、あえて学力の低い学生を入学させているからです。ただ、日東駒専クラスの中位校や六大学の一部でも出現していると聞きます。中には責任を教師に押し付け、教員を退任に追い込もうとする驚愕行動をとる学生も。大学は経営上の理由などから公にしませんが、モンスターたちの存在は、全国で耳にするだけに深刻な問題です」

■ネット活用する2ちゃん型

 実際、どんな事件が発生したのか? 以下、斎藤氏の元に寄せられた事例だ。

(1)同じ大学の別の学部に在籍する彼女を自分の授業に偽装出席させた。これがバレ、担当教授に注意されると、「オレの勝手だ」と、逆切れしクレームを付けてきた。(首都圏の有名私大)

(2)学内の目安箱(学生が自由に投書できる)に、ゼミ担当教員からセクハラを受けたと投書し大騒ぎに。実は派閥争いに勝ちたい親しい教授の意向を受けた真っ赤なウソだった。(都内の私大)

(3)講義中、レビューシート(授業内容の理解度や感想を出席表などに書かせる)に、教授の誹謗中傷を書いていた。授業で騒ぎ、教授に注意されたことへの腹いせだった。(関西の中堅私大)


 ほかにも、出席点をくれないのはおかしいと反論する学生、教授の悪口をネットで流す“2ちゃんねる投稿型”学生、あの教員を辞めさせろと大学にいちゃもんをつけたモンスターら、自分勝手でやりたい放題。

■“モンペア”世代の子供たち

 彼らは、2000年前後に世間を騒がせたモンスター・ペアレント世代の子供たちで、“言ったもん勝ち”の性格は、親譲りだとする説もある。

 一方、学生たちに対する大学の対応は、甘いと言わざるを得ない。

「退学となると、それでなくても定員割れが続く地方私大では学生数が減り経営問題に発展しかねない。また、公になれば文科省から“教育の質”に関してただされる羽目に。どっちにしても頭が痛い問題で、結局、学生の処分はウヤムヤのまま卒業させてしまうのです」(斎藤健一郎氏)

 こんなやからが“いい子”の皮をかぶって、自分の会社に入ってきたら一大事だ。遅刻・欠勤する、挨拶はロクにできない、社会常識は半人前、上司の指示は聞かずに反論とクレームだけは一人前……絶望的ではないか。

 大学教育事情に詳しい千葉商科大学人間社会学部の松野弘教授が言う。

「すでに、多くの大学が1年生向けに初年次教育を実施しています。金沢工業大学や東海大学では学力の低い学生に対して、『リメディアル(補習)教育』『導入教育(正規授業を受ける前の準備教育)』といった形での学力補強戦略をとっています。こうしたキメの細かい“知の基礎教育”をしてこそ、社会常識や専門知識など大学生としての本物の実力が身に付くと思います」

 今年入社の新人に“モンスターあがり”がいないことを祈るばかりだ。