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引用元:毎日新聞2016年5月15日 12時45分

部活動での出勤に課題も

 「教職員の業務の実態を知ってほしい」。横浜市教育委員会は2015年3月、保護者に異例の手紙を配布した。市立校と諸外国の教職員の勤務時間を比較するデータを提示し、学校に閉庁日や定時退勤日を設けることなどに理解を求めた。

  手紙の衝撃は保護者よりも教職員に大きかった。市教委が率先して負担の軽減に取り組む姿勢を示したことで、いくつかの学校が業務の改善に動き始めたのだ。市立蒔田中(南区)もその一つ。木村悦雄校長は「方針が明確になり、動きやすくなった」と明かす。

 市教委によると、市立校で働く教職員の1日平均の業務時間は11時間27分。残業は原則として認められず、「自発的な勤務」とみなされる。蒔田中は15年度、この問題に着手。月に1日、午後5時の退勤を促す「ハッピーアフタースクール」を始めた。企業が「ノー残業デー」などとして取り組んで久しいが、学校での例はほとんどなかった。

 業務時間外も鳴る電話に、どのように対応するのか。導入前の教職員の反応は芳しくなかった。木村校長は「思い切って留守番電話にした」と言う。緊急の連絡は地域の学校教育事務所が担当者に転送するため、「意外なほどに保護者の批判はなかった」と振り返る。今年度は病気でなく、健康なときの年休の取得を推奨。いずれも「疲れを抜いて、元気に子どもと向き合える」と教職員に好評だ。

 一方、解決の難しい課題もある。部活動だ。市教委によると、夏季休暇中に当番を置かない学校閉庁日の実施率は市立小80%に対し、市立中は28%。中学で本格化する部活動の影響が大きいとみられる。蒔田中も昨年度に5日間の学校閉庁日を設けたが、指導のために出勤する教職員が散見された。また、土日の出勤も珍しくない。

 木村校長も「部活は子どもの成長、非行の防止などに寄与する。やる気をみせる子どもを放って休めない教職員の気持ちも分かる」と頭を悩ませる。市教委は負担の軽減策として外部指導者の活用を促進。今年度は235人分の予算を確保したが、教職員間で「部活動は子どもとの関係づくりに欠かせない」という声も根強く、負担の軽減との兼ね合いが難しい。【水戸健一】