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引用元:毎日新聞 2015年10月12日 東京朝刊

 パソコンを使って出題・解答するテスト方式「CBT」(Computer Based Testing)に注目が集まっている。新しい大学入試制度の設計を議論している文部科学省の専門家会議が9月にまとめた中間報告で、大学入試センター試験に代わって2020年度に導入する新共通テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」でCBTを試行するとの方針が示されたからだ。実現可能性はどの程度あるのか。CBTの現状と課題を探った。

 東京・大手町の「日本漢字能力検定協会」(本部・京都市)東京事務局。その一室は漢検のCBT専用だ。26ある席にそれぞれパソコンが置かれ、隣席とは薄い板で仕切られている。

 受検者が漢字の「読み」を答える場合、パソコンのキーボードで「ローマ字入力」する。漢字を「書く」のは、専用ペンでノート代わりのタブレットの液晶画面上に「書く」。記者も使ってみたが、予想以上に使いやすかった。「でも、人によって評価は分かれます。『つるつるしていて書きにくい』という方もいます」(担当者)。当然、消しゴム機能もついている。

 CBTに不慣れな人のために、大問ごとにまず練習問題が出てくる。それをこなして慣れた上で本番に臨める仕組みだ。

 ●早い採点結果

 CBTを導入したのは02年度。2〜7級が対象で、問題の難易度は紙の検定と同程度になるよう調整している。利点は、受検機会を多く設けられることと採点結果が早く出ることだ。

 実施日は、「紙」の検定が年間3回なのに対し、CBTは日曜・祝日、年末年始を除く毎日だ。しかも1日1回にとどまらない。東京事務局では平日2回、土曜日と第1、3金曜は3回も受けられる。毎回問題は違う。

 受検日から約10日後に結果が出る。紙の検定より約1カ月早い。漢字を「書く」問題は人が採点するが、それ以外は瞬時にコンピューターが採点するからだ。受検者がまだ少ないことも影響しているという。

 利便性が受け、CBTでの受検者は10年度から5年連続で増え、14年度は2万人を突破した。約8割は中高生や就活前の大学生だ。東京事務局には北海道や沖縄から受検しに来る人もいるという。ただ、漢検全体の受検者の約1%にとどまり、周知が大きな課題という。現在全国で32カ所のCBTでの受検が可能な会場を「各県に1カ所は整備したい」と担当者は意気込む。

 CBTは漢検以外でもさまざまな検定・資格試験で導入されている。

 例えば14年8月に始まった英語検定試験「GTEC CBT」。「リーディング(読む)」「リスニング(聞く)」問題は選択肢の中から正解をマウスでクリックする。「スピーキング(話す)」は小さなマイクを通して音声を吹き込み、「ライティング(書く)」はキーボードで打ち込む。

 この試験を運営するベネッセコーポレーションによると、CBTの場合、個々の受検者の正答率に応じて自動的に問題の難易度を変えて出題できるため、効率良く能力を判定できるのが利点という。

 ●動画や音声も

 動画や音声を使えるのも紙にはない特長だ。経済協力開発機構(OECD)が加盟国などの15歳男女を対象に3年に1度実施する国際学力テスト「PISA(ピザ)」の12年テストでは、▽掃除ロボットの動画を見て、その動きの特性を答える▽取扱説明書のないエアコンのリモコンの操作方法をテスト時間中に試行錯誤しながら解答する−−といった問題が出された。

 ◇公平な設備、問題のプール必要

 CBT運営の国内大手の担当者によると、検定や資格試験は「紙」から「CBT」に移行しつつある。しかし、国が検討している新共通テスト「学力評価テスト」で導入するには多くの課題が考えられるという。

 まず設備の問題だ。学力評価テストの受験者は50万人に上る。それだけのパソコンをそろえ、会場ごとに使える環境を整えることは簡単でない。加えて、入試には高度な公正・公平性が求められる。「使うパソコンによって有利、不利にならないよう、画面の解像度やネットワーク環境などコンピューターの仕様の統一を図らなければいけない」と指摘する。

 維持費のこともある。大学の医学部は共同で05年から、臨床実習への進級試験をCBT方式で実施している。運営するCATO(医療系大学間共用試験実施評価機構)によると、維持管理費は年間1億円。インターネットを通じた外部からの攻撃などによる情報流出対策も不可欠だ。これらの費用は受験料に影響する。

 大量の問題をプールしておく必要もある。問題を事前に一定数の人に解かせて、難易度を設定しておかなければいけない。紹介した医学部の進級試験でも、参加大学に毎年、新しい問題を約50問ずつ作ってもらい、実際に出題する問題を選び出している。良質な問題を大量に継続して確保する方策が必要だ。

 「学力評価テスト」では記述式の導入が検討されている。数十万人分を短期間に採点できるのか。担当者は「コンピューターには、決められたキーワードが入っているかどうかを判断することは可能だが、文章の内容を採点するのは難しいだろう」と話している。【三木陽介】

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 ◇CBTの主な利点と課題

 <利点>

・結果を早く出せる

・受験者の正答率に応じて問題の難易度を自動的に変えられる。このため効率良く受験者の能力を測れる

・テストを何度も実施しやすい

・動画や音声が使えるため多種多様な問題を出せる

 <課題>

・整備費、維持管理費

・問題を大量に作って蓄積しておく必要がある

・ネット攻撃による情報流出対策

・記述式問題の採点が技術的に難しい