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引用元:2015年9月25日 中日新聞

 文部科学省が発表した公立小中学校の教職員の勤務実態に関する初の全国調査では、教諭は1日12時間前後も学校にいることが判明した。自宅に持ち帰る仕事も1時間半あり、特に子育て世代の教諭らは、仕事と育児の両立の難しさを訴える。

 「成績付けや提出物のチェックが終わらず、学校に寝泊まりしたことがある」。そう打ち明けるのは、埼玉県内の中学校に勤務する三十代の男性教諭だ。中二の担任で、部活の顧問。朝七時半に出勤し、帰宅は毎晩九時半を過ぎる。

 いじめや不登校の調査結果を教育委員会に提出し、友人関係で問題を抱える生徒や親と放課後に話し合うなど、会議や書類作りに追われていた。「授業の準備を始めるのは、生徒が帰宅した午後六時以降」。夏休み期間の三分の二は部活指導で、家庭訪問にも回った。

 妻も中学教諭で、小学生と保育園の子ども二人がいる。「平日はほとんど子どもの顔を見られない。妻に育児の負担がのしかかっていて心苦しい」と話す。

 東海地方に住む三十代の元小学校教諭の女性は、二人の子育てと仕事の両立に悩み、三月に仕事を辞めた。

 昨年度は高学年四十人のクラスを担任。日本語がたどたどしい外国籍の子もいた。最も大変だったのは、保護者への対応。課外活動費を払わなかったり、子どもを一週間無断欠席させたりする家庭には、年に十回以上も訪問した。保護者が働いている場合は、夜に訪問せざるを得なかった。

 帰宅後や土・日曜日も授業準備に追われた。部活の顧問として夏休みも指導。夫は勤め先の仕事が忙しく、育児はほぼすべて女性が担った。「ぐずって泣く自分の子どもを抱き締める力もないほど疲れていた」。先輩教諭に相談したが、補助の教員は付かなかった。「同僚はみんな、いっぱいいっぱいだった」

 退職直前の二カ月間は、県外の母親に自宅に住み込んで家事を手伝ってもらった。だが体調が悪化し、「もう限界」と辞表を出した。「子育てと両立できず、仕事を辞めた女性教諭は周りに多い」

◆中学教員の勤務時間、日本が最長

 文科省が七月に発表した調査結果によると、六千七百五十七人が回答した公立小中学校の教諭の一日平均在校時間は、小学校が十一時間三十五分で、中学校で十二時間六分。自宅に持ち帰る仕事もそれぞれ一時間三十六分、一時間四十四分だった。

 結果に合わせて、長野県信濃町の小中一貫校「信濃小中学校」の取り組みが業務改善例の一つとして挙げられた。同校では、小学一~四年のクラスに、担任に加えて教員免許を持つ常勤の学習支援員を配置。教材の作成など、担任の負担軽減を図っている。

 ただ、自治体や校内の努力だけでは問題は解決しないとの指摘もある。

 元さいたま市教育委員会教育長で、埼玉大教育学部の桐淵(きりぶち)博教授は「最近の子どもたちは、家庭内の生活習慣に踏み込んだ指導が必要なケースが多い。教員の仕事は増える一方」と指摘。「国の将来が危ぶまれるほど、現場は苦しい状況。国の予算で教師を増やして少人数学級で対応するべきだ」と強調する。

 経済協力開発機構(OECD)による二〇一三年の調査では、日本の中学教員の勤務時間は三十四カ国・地域のうちで最長。今回の実態調査は、この結果を受けて初めて行われた。

 (細川暁子)