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引用元:2015年9月6日11時08分 朝日新聞デジタル

 いじめはなくせると思いますか? 朝日新聞デジタルで展開したアンケートには1668の回答が寄せられました。今回は保護者や現役教員の方から寄せられた声を紹介します。メールでも多数の意見が寄せられ、いじめに苦しんで自死した中学3年の女子生徒の父親(47)と、いじめ対策に取り組む教員(48)に直接、お話をうかがいました。

■どうすれば自死を食い止められたのか

 中学3年生だった娘(当時14)は2年前の5月、自死しました。市教委の調査委員会はその年の秋に「部活動でのいじめが大きな誘因」と認めました。でもそれで娘がかえってくるわけではありません。どうすれば自死を食い止められたのか、今も悩み続けています。

 娘は部活で同級生から無視され、悪口を言われていました。暴力をふるわれたり、金品を奪われたりしたわけではありません。「この程度のことはいじめじゃない」と感じる加害生徒もいたと思う。「自分はもっとひどいいじめに耐えてきた」と思う人もいるかもしれない。

 でも、いじめの問題を「自分のものさし」でとらえていては、いじめはいつまでもなくならないのではないでしょうか。人それぞれに「つらい」「嫌だ」と思うことは違う。娘にとっては仲間外れが、孤独が、何よりもつらかったのです。100人いたら100人の考え方、感じ方がある。そのことを学校現場で、家庭で、地域の集まりで、もっと子どもたちに伝えてほしい。

 私は、娘が亡くなる3カ月前に人間関係で悩んでいることを知りました。自宅でその話を娘に切り出すと、うつむいて泣き出すのです。詳しく聞けずに「世界でみんなが敵になっても、父さんも母さんもずっと味方じゃけえな」と伝えると、娘はただただ泣き続けました。

 悔やんでも悔やみきれないことがあります。「つらいなら部活をやめたらいい。でも学校は休まず行った方がいいんじゃない」と言ってしまったんです。当時の私は部活をやめれば解決すると思い、娘の悩みの深さに気づいていなかった。死を選ぶなんて思いもよりませんでした。

 なぜ「学校に行け」と言ってしまったのか。今考えると、私が世間体を気にしていたのだと思います。不登校への抵抗感があった。

 いじめで苦しむ子を持つご家族の方には私と同じ後悔をしてほしくない。世間体なんて関係ない。子どもには「君が生きてくれているだけで幸せなんだ」という当たり前の思いを、普段からきちんと伝えてあげてほしい。心からそう思っています。(聞き手・長野佑介)

■兵庫県尼崎市立中学校教諭・西村純一さん(48)に聞く

 いじめは、学校の改革である程度はなくせると思います。公立中学校で20年以上教え、生徒指導主任も経験して痛感するのは、「学校がざわつけばいじめも増え、発見も遅れる」ということです。

 いじめによる自殺が報道され、個別の子のその時だけがクローズアップされると、教師は何をやっていたんだと非難される。でも、教師はその子だけと関わっているわけではありません。たばこや深夜徘徊(はいかい)の指導もありますし、保護者のクレーム対応にもかなり時間を取られます。その上、定期試験、学校行事、部活、会議……。言い訳のように聞こえるかもしれませんが、本当に時間がない。小さないじめの芽すべてに、丁寧に向き合っていたら、教師の方がパンクしてしまうのが、現実です。

 では、どうすればいいのか。学校全体の雰囲気を変え、一挙に減らすことが有効だと考えます。学校がざわざわして教師同士も仲が悪いのに、集会や学級で「いじめはダメ」といくら言っても生徒は笑う。熱血教師が受ける時代でもありません。

 子どもの前だけでも教師同士が仲良くすることです。私の学校では、教師でチームを作り、朝の職員会議の時も交代で教室を回ります。違う教師の目で見ると、あれっと気づくことがある。仲のいいふりだったのが本当に仲がよくなり、情報が共有できるようになれば、自然に学校は落ち着きます。すべてに一対一で対応しなくても、いじめをしている子が違和感を感じる雰囲気ができていくんです。

 指導力のない教師や、アンテナが立っていない若手教師の学級は、それでもざわつきます。私は教師向けの生徒指導通信を発行しています。たとえば夏休み明けなら、1学期と友達関係が変わっていないか目配りしてほしいと。これまでと違う仲間で遊び、他校の生徒とつながったことでトラブルが起きます。いじめる側も、家庭的に恵まれなかったり、過度に親が厳しかったり、期待されていたりして、ストレスを抱えている。ある意味で被害者なんです。加害者の根本的な問題と向き合えば、両方が救えると思います。(聞き手・宮坂麻子)

■「絶対悪」毅然と対応

 アンケート全体で、いじめが「なくせる」「ある程度なくせる」の回答は合わせて29%でした=グラフ。一方、現役教員は38%がこの二つを選びました。

●「『いじめはなくすことができない』という考えも、いじめを助長することにつながる。『いじめは絶対悪』と毅然(きぜん)とした態度でいることが重要」(30代男性)

●「いじめはあるものと思って子どもたちに接しています。小さなことであっても子どもたちが言いに来てくれる、そんな担任でありたい」(50代女性)

●「学校はそもそも、異質を排除する文化をもっています。そういった文化が子どもには『できない者は悪い、悪いことは排除してよい』という考えをつくりだしやすい。学校が『寄り添う』『あたためる』という文化をもてたら良いなと思います」(50代女性)

 一方、子どもを取り巻く環境の変化を懸念する声もありました。

●「最近はラインなどのやり取りが増え、閉ざされた世界のため周りの大人が気づいた時は深刻な状態になっていることもある」(30代女性)

●「人の心の中に、誰かより優位という意識がいらなくならない限り、いじめは無くならない。読書量が減り、人の気持ちをくみ取れない子が増えている今、『相手の気持ちを考えなさい』は出来ないと思って接しないと、今のいじめに対抗はできないと思います」(50代女性)

■避難できる居場所を

 保護者からは500余の回答がありました。学校への要望、避難所の必要性と、意見は多岐にわたります。

●「いじめる子の心の内側を理解し、その子の『いらいら』を取り除かない限り、いじめはなくなりません。親も先生もいじめる子を注視し、いじめを『是認しない』ようにしないといけない」(40代女性)

●「問題は加害者側に当事者意識が欠落していること。むちゃな提案ですが意識が無い人も含めて模擬体験させるのはどうでしょう。自分が嫌だと感じることは他人にも決してやらないという考えを持たせるには、ショック療法も必要です」(40代男性)

●「いじめをなくす努力にエネルギーを注ぐより、いじめから避難できる居場所づくりや、傷ついた心をもう一度奮い立たせるような応援態勢、心から信頼できる相談場所などを用意することに力を入れてほしい」(40代女性)

●「世の中を善悪のどちらかに分けて考えている限り、いじめはなくならない。『いじめは許さない!』と声高に叫ぶ人が、『元いじめっ子』をいじめる『現いじめっ子』に変貌(へんぼう)する。正解はないよね、でも、お互いに理解したいよねという共感が必要だと思う」(40代女性)

■電話で託された投稿

 アンケート「いじめを乗り越えるには」の告知が紙面に載った4日朝、朝日新聞お客様オフィスに女性から電話がありました。ネットを使えず、筋ジストロフィーのため手紙も書けず、代筆を頼める人もいないとのことでした。電話で託された投稿を紹介します。

 「自分は小中高校といじめに苦しみました。大変つらい思いをして、47歳になった今も心に残っています。でも、苦しいかもしれないけど、あしたは待っている。今いじめにあっている人も、死んだら未来はないんだと思って、すぐに死ぬことを考えたりしないでほしい。病気などで生きたいと思って死んだ人の分を生きてほしい」

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 アンケート「いじめを乗り越えるには」をhttp://t.asahi.com/forum別ウインドウで開きますで実施中です。ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするでも受け付けています。