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引用元:2015年06月12日(金) 現代ビジネス

   世界ランキング200位以下に沈む早慶

前回に引き続き、今回もシンガポールでは当たり前すぎるが、日本では厳しく聞こえてしまうかもしれない"本当のこと"を書く。

「早稲田や慶應の学生は、シンガポールでは履歴書すら見てもらえないかも」

ストレートにいうと、シンガポールでは世界大学ランキングで200位以内しかまともな大学とみなしていないのだ。これはシンガポールに住む、早慶両校の卒業生である私にはかなり悔しい事実である。

学生が一定期間、ある国で仕事を経験する制度を「ワーキングホリデー」というが、シンガポールの場合、ワーキングホリデーが認められるのは世界ランキングで200位以内の大学を出た人間のみなのだ。

シンガポールでワーキングホリデーができるのは、以下のいずれかの世界大学ランキングで200位以内に入る大学の学部在学生または学部卒業生のみ。

Quacquarelli Symonds World University Rankings
Shanghai Jiao Tong University’s Academic Ranking
Times Higher Education World University Rankings

例えば、上記の大学ランキングで頻繁に引用されるTimes Higher Education World University Rankingsでは、早稲田大学は351~400位。慶應義塾大学にいたっては400位以下。200位どころか二つとも圏外である。ともに世界レベルではすでにイタすぎる大学なのだ。最新版のTimes Higher Education Rankingで見れば、シンガポールでワーキングホリデー対象校は東大を筆頭に5校しかないことになる。

   世界基準で自分の立ち位置を相対化せよ

一定期間とはいえ、学生に労働を認めるワーキングホリデーの認証を大学ランキングに連動させるやり方はシンガポールらしい。シンガポールで労働するに値する人の学歴を厳しく見ているわけだ。最新のQuacquarelli Symonds World University Rankingsだけが慶應を197位にランクインさせているが、これもギリギリのライン。

つまり早慶はほぼ二流以下なので、シンガポールで学生時代に働く経験をすることはほぼ無理ですよ、ということだ。厳しいかもしれないが、これが今の世界の現実なのだ。

今の日本人、特に21世紀を生き抜かなければならない若い人にもっと自覚してほしいのは、世界の中での自分の相対的地位だ。アメリカでは東大も京大も誰も知らない。シンガポールでは慶應も早稲田も知られてはいるが、イタい大学扱い。日本ではまだブランド力もあるようだが、それも世界基準とはズレた感覚なのだ。

こんなことをいうと三田会や稲門会の大先輩から厳しいご指摘をいただきそうだが、「真の母校愛があるなら、寄付をして大学にちゃんと文句をいうべきだ」と私は思う。

   受験料や入学金依存を脱せよ

18歳の人口が激減する中、定員を減らすどころか、中途半端にアメリカの大学を模倣するような学部を新設して定員を水増しすれば、早稲田も慶應も質が劣化するのは当たり前だ。人口が減る日本市場にしか対応できていないのに、AO入試のような制度まで導入してしまい、一昔前だったら入れなかった学力の低い子がどんどん受かっているのだから。

ビリギャル(受験直前の成績では慶應合格圏外だった女子高生が一念発起して合格する話)が美談になっているが、学力だけで測れば間違いなく昔の慶應には入れなかった受験生だと思う。一概に悪いとは思わないが、世界の名門大学は、受験生の短期間の急激な学力変動に非常に懐疑的だ。そういう滑り込み方をした人物が伸び悩む事例が相次ぎ、より安定した学力を探る方向に向かっている。ビリギャルが美談になるのとは逆方向だ。

果たして過去の試験方法と18歳人口前提での試験で彼女は合格出来ていただろうか? 慶応のクォリティコントロールは大丈夫か? AO入試にしても学力チェックは十分なのか? 世界から見れば、日本の大学の劣化の象徴になりかねない事実をわれわれ卒業生はもっと厳しく認識して指摘するべきだ。「母校愛」は母校の質の維持向上も含めて表すべきだと思う。

ハーバードもエールも世界中の志願者からの応募が10倍以上に激増しても定員を増やしていない。倍率が上がるから自然と学生の質が上がるのだろう。志願者が増え続ける、私のアメリカの母校であるアイビーリーグの大学では、定員を増やすことは学生の質を下げることになるという理由で、卒業生や理事会から簡単にOKがでない。その判断が学生のクオリティコントロールにつながるのである。

これでは世界の名門校と日本の大学に差がつくわけだ。早稲田や慶應にその判断ができないのは、アメリカの大学に比べて資金力が弱く、受験料や入学金に依存しないといけないからだろう。

三田会や稲門会という卒業生の集まりに誇りを持ち続けるためには、大学がクオリティコントロールできるように、定員を水増ししなくていいように、もっといえば定員を減らせるように、寄付をしなければならないと思う。税制の違いもあるので比較するのは酷な話ではあるのだが。

あるいは、教員に英語で授業をさせて、論文も世界で評価されるジャーナルに提出させて、海外でのブランド力をあげるべきだ。そうすることで、人口が増えている海外からも有能な受験生を受け入れることができる。

そのためにはお金が必要だ。母校愛があるなら、まずは寄付から始めるべきだろう。ハーバードやエール等の名門大学は、税制のおかげで自然にお金が集まるというより、有能な学生を集めるために、卒業生も大学も頑張って世界に営業かけて質を維持向上しているのだ。